【パブリックドメインの映画上映会のすすめ】人間ドラマとして評価の高い戦争映画3選


人間ドラマとしての戦争映画に触れる意味 

今回はパブリックドメインとなっているハリウッドの戦争映画のなかから人間ドラマとして高い評価を受けている3つの作品を紹介していきたいと思います。ピックアップした映画は、敵や味方、善と悪といった二項対立の単純化された構図を描くことがありません。また戦争を題材に単純なアクション映画にも仕上げてもいません。描いているのは、あくまでも戦争という極限状態のなかにいる人間の姿です。国を愛する気持ちと裏腹に現前に拡がる非人間的世界を前にしたときの葛藤、極限下における倫理的なジレンマとの戦い、プレッシャー下にある上官の苦悩、生死の狭間で突然沸き起こる仲間意識など、極限状態を前に人間はいかに苦悶し、いかに反応したのか、そしていかに人間の威厳を守ろうとしたのかを描いた映画を観ることは、戦争の実相の一端に触れることにつながります。敵・味方という二項対立とは無縁の戦争映画を観れば、戦争に対する客観的な態度を養うことにもつながりますし、本当の犠牲者は誰なのかという冷徹な視点を養うことにもつながるでしょう。以下の3作品は現在では決して有名な作品とはいえないかもしれませんが、これらの普遍的な映画を観ることは、良質な映画体験につながるはずです。

『砂漠の鬼将軍』 (1951年)

“砂漠の狐”と異名をとったドイツ軍勇将ロンメル元帥の悲劇を描いた傑作

ハリウッドが敵国ドイツの軍人を主役にすることはかなり稀なことです。「砂漠の狐」と連合国軍から恐れられたロンメル将軍の高潔な姿と狂気的な戦略を強いるヒットラーとの確執、ヒットラー率いる国家と軍人の誇りの間に揺れる葛藤と悲劇的な運命を描いた戦争映画の傑作です。監督は、『ナイアガラ』や『ネバダ・スミス』のヘンリー・ハサウェイ。本作はヘンリー・ハサウェイの諸作品のなかで最もリリカルな作品と言えるでしょう。主演は、『海底二万里』のネモ艦長役が印象的なジェームズ・メイソンが務めています。

制作年度:1951年 上映時間:88分
監督名:ヘンリー・ハサウェイ
キャスト:ジェームズ・メイソン(エルヴィン・ロンメル元帥役)
ジェシカ・タンディ(ルーシー・ロンメル夫人役)
セドリック・ハードウィック(カール・シュトロールン博士役)

『栄光何するものぞ』(1952年)

ジョンフォードが描いた反戦コメディの隠れた傑作

愛国的でタカ派のイメージが強いジョン・フォード監督ですが、本作はそのパブリックイメージとは大きく異なる反戦コメディ映画の傑作です。第一次世界大戦のフランス戦線。百戦錬磨の海兵隊大尉の主人公のところに宿命のライバルが赴任してきます。ふたりの関係はやがて前線基地の娘をめぐる激しい恋の鞘当てに発展しますが、過酷な出撃命令のもと生死を共にするようになり、彼ら唯一無二の戦友として友情を育んでいくことになります。前半部の陽気なコメディタッチから一転、後半部は地獄の戦場が舞台となります。その激しい明暗は、消耗品のように命が使い捨てにされる戦争の惨さを強く印象づけます。軽いタッチのコメディだと高を括って観ていた観客はいきなり戦争の前線でその不条理を確認することになります。戦争映画を描くよりもコメディという立ち位置から戦争の不条理を描いたほうが観客に響くだろうとするジョン・フォードならではの計算があったのかもしれません。ジョン・フォードは、第二次世界大戦における4年間、戦略情報局の一員として軍に随行しカメラを回しつづけました。ミッドウェイでは負傷してしまいました。その後ノルマンディ上陸作戦にも随行しカメラを回しました。戦争の実相を直に知っているジョン・フォードの映画は高い説得力をもって語りかけてくることでしょう。

制作年度:1952年 上映時間:111分
監督名:ジョン・フォード
キャスト:ジェームズ・キャグニー(ダニエル・フラッグ大尉役)
ダン・デイリー(キプリ・カート曹長役)
コリンヌ・カルヴェ(シャルメイン役)

『サハラ戦車隊』(1943年)

砂漠における極限のサバイバル劇、ハンフリー・ボガート主演

北アフリカの砂漠で孤立したアメリカ軍の兵士たちが、僅かな水を求めて必死に生きながらえようとする究極のサバイバル劇です。途中でイギリス兵や、フランス兵、捕虜のスーダン兵などが加わり、水をもとめて協力する極限状態の人間模様が描かれます。戦争の悲惨さだけでなく、生死を分ける緊迫した状態での人間の心理を描いた傑作です。主演は、『カサブランカ』や『マルタの鷹』でお馴染みハンフリー・ボガート。監督は、ハンガリー出身のゾルタン・コルダ。ヨーロッパは第一次世界大戦で数えきれないほどの多くの兵士がなくなり多くの土地が焦土と化したという悲惨な経験をしました。ヨーロッパ人の多くはこの戦争の現実を目の当たりにし戦争に栄光がないという冷厳な現実を内面化しました。ヨーロッパ人ゾルタン・コルダ監督のこうした冷徹な視線が、この映画をただのアクションではなく普遍的な人間ドラマに仕上げることにつながったと思われます。

制作年度:1943年 上映時間:97分
監督名:ゾルタン・コルダ
キャスト:
ハンフリー・ボガート(ジョー・ガン軍曹役)
ブルース・ベネット(ワコ・ホイト役)
ロイド・ブリッジス(フレッド・クラーソン役)

胸を打つ、人間ドラマとしての珠玉の戦争映画を3作品紹介させていただきました。いま日本では、戦争を知っている世代がどんどんと消えていくなか、安易に戦争を口にしてしまう空気がありますが、本作には戦争を体験した映画人の切実なメッセージが込められています。ぜひこの機会に上映会を企画してみてはいかがでしょうか。弊社Bunkidoでは、本作の日本語吹替版と日本語字幕版をご用意しています。上映権の料金については、お問い合わせフォームからご連絡ください。無理のない上映権料をご案内いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。