図書館向け映画資料のご提案|古典映画2000タイトルの価値とは

映画DVDをすでに蔵書されている図書館も多いと思いますが、普段どのように方針で選書されていますでしょうか。映像資料のなかでも、映画資料の位置づけが曖昧なままになっている図書館も多く見受けられます。とくに多いのが貸し出し数の増加を期待して新作を中心に蔵書してしまうケースです。新作中心になってしまうと蔵書としての一貫性が乏しく、入荷した直後は利用されていてもその後の利用が芳しくないというケースにつながりかねません。ここでは、利用層の拡張や来館動機につながるとともに文化資料としての価値も高められる古典映画の有効性をご説明していきたいと思います。

なぜ名画と言われる古典的映画が有益なのか

貸出率を考えて利用者の耳目を集めやすい新作ばかりに目が行きがちですが、人気の新作はブームと同様に熱しやすく冷めやすい傾向があることが否定できません。確かにエンタメ映画の人気作は、映画ファンに限定されず、あまねく一般層に訴求できるものの、入荷の翌年以降、利用が伸び悩んでしまい一過性で終わってしまう傾向になりがちです。
一方の古典映画は、最新のヒット作品とは異なり一時的な流行に左右されません。歴史に足跡を残した名作といわれる名画の数々は、文学や歴史、社会学、世相史などといったテーマとも連関するため普遍的な価値を備えています。映画ファンに訴求できるだけでなく文化的価値として長く利用され常設資料としての価値につながるわけです。また現在は活字離れが著しく利用者数の低下への懸念は消えることがありませんが、映像作品を置くことで非読者層の利用促進を高めることが期待できます。また図書館のイメージを書籍ばかりで固いなというネガティブに受け取っている人たちには、映像作品を蔵書に加えることで柔らかいイメージに転換することも有益なポイントとして数えることができます。

名画と言われる古典映画の選書アプローチ

長期的に安定した利用の望まれる古典映画の効果的な蔵書の方法についていくつかのアプローチをご紹介いたします。

①文化的価値を重視して蔵書するアプローチ

『ローマの休日』は老若男女、誰でも知っている名作ですが、それ以外にもハリウッドやヨーロッパ、日本にも多くの名作が存在しています。しかし知名度やエンタメ要素だけで選ぶのは妥当な方法ではありません。名作と呼ばれ歴史に残っている作品の多くは、当時の社会的な背景や世相を反映して生まれています。つまり同時代性の側面が強く、そうした作品は近現代の社会史、世相史を理解する上では大変貴重な資料となります。つまり様々な視点からリファレンスで活用される可能性があるわけです。

例えばジェームズ・ディーンの代表作である『理由なき反抗』(1955年 / 監督:ニコラス・レイ)は、ヤングアダルトという新しい世代の誕生を象徴しました。いままで焦点を浴びることのなかった自己同一性を模索する中産階級層の「若者の孤独」を代弁したこの映画は若者たちの共感を得て大ヒットにつながりました。背景や動機は米国とは異なりますが、日本にもこのヤングアダルトが登場することになります。当時の世相史を理解するうえで極めて重要な作品といえるでしょう。他にも第二次世界大戦時のナチスへの抵抗を示した『無防備都市』(伊1945年:監督ロベルト・ロッセリーニ)や敗戦後の社会保障がなく貧困に苦しむ市民の疎外感を描いた『自転車泥棒』(伊1946年:監督ヴィットリオ・デ・シーカ)などがあります。こうした重要な名画作品は後日また別の機会に紹介したいと思いますが、アカデミー作品賞受賞作やカンヌ映画祭やヴェネツィア映画祭のグランプリ作品を参考に選定するのも良いでしょう。こうした作品の蔵書は文化的価値を高め利用者の知的興味を満たすことになります。また映画史に興味のある新しい利用者層の獲得にも期待がつながります。

②書籍との連動で貸し出しの動きが拡げるアプローチ

原作の書籍とDVD映画とを連動させることでより貸出の動きに拡がりがでます。たとえばブロンテの原作の映画『嵐が丘』を借りた利用者は、次にブロンテの原作書籍や関連本に手を伸ばす可能性がでてきます。単体では動かなかった本が動くようになる機運が生まれるわけです。「原作を読みたい」と思う利用者もあれば逆に「映像作品で観ていたい」という利用者も生まれるかもしれません。また「時代背景を知りたい」、「似た作品を観たい、読みたい」というかたちでリファレンスを求める利用が増えていく可能性もあります。

名画と言われる映画の多くは、著名な文学作品を原作にしています。有名なところで言えば、ヘミングウェイを原作とした『誰が為に鐘は鳴る』やブロンテ原作の『嵐が丘』や『ジェーン・エア』、マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』、セオドア・ドライサーの『アメリカの悲劇』を原作とした『日の当たらない場所』など枚挙に暇がありません。またアンデルセン童話をモチーフにした『赤い靴』のような映画もあります。
サスペンス分野に目を移せば、『太陽がいっぱい』 (’60) でつとに有名な女流作家パトリシア・ハイ スミス原作のヒッチコック映画『見知らぬ乗客』やウィリアム・アイリッシュ原作の同じくヒッチコック映画『裏窓』などが存在します。戯曲では、シェイクスピアの『ハムレット』、テネシー・ウィリアムズ原作の『欲望という名の電車』など、こちらも多くの名画が存在しています。

③豊かなテーマ展示につなげるアプローチ

戦争を描いたものや女性の自立を描いたもの、社会問題を描いたものなどテーマを切り口に書籍と映画DVDをテーマ展示とするアプローチも考えられるでしょう。書籍とともに映像作品が展示されることで展示のイメージが豊かになり、選ぶ楽しさが増え興味をそそられる利用者も増えることが期待できますので展示ブースなどでの滞在時間が増えることにつながるでしょう。また映像作品を陳列することで普段本を読まない非読者層への訴求にもつながります。

古典的映画、名作映画を揃えることは、単なる娯楽資料ではなく、読書活動や学習支援と接続する資料として活用可能になります。長期的な蔵書価値を持つ分野として、図書館資料の一部に組み込んでみることを検討してみてはいかがでしょうか。Bunkidoでは、パブリックドメインの映画に日本語吹き替えや日本語字幕を付与した2000タイトル以上用意しております。ご購入やお問い合わせはフォームよりご連絡ください。