映像資料となると多くの方は、新作映画を思い浮かべるかもしれません。人気の新作映画は、確かに入荷時は利用数の増加が期待できますが、時代とともにブームが去ると利用者からも色褪せてみえ、急激に貸出数が落ちていく傾向にあります。ベストセラーも人気映画も、「初速は早く、落ちるのも早い」という宿命をもっているのかもしれません。それに比べて古典の書籍は色褪せることなく地道ではあるものの利用され続けますし学校教育や文学研究、読書会へと接続しやすくなり知的資源としても重要です。
実は映画の世界では、多くの古典文学が映画化されていることをご存じでしょうか。有名なところではマーガレット・ミッチュルの『風と共に去りぬ』やブロンテの『嵐が丘』、ヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』、スタイベックの『怒りの葡萄』やシェークスピアの『ハムレット』に至るまで枚挙に暇がありません。そうした映像作品群は、活字離れが進む来館者に対して新たな利用価値を提供することにつながります。今回のコラムでは、文学を“観る”ことが読者層を広げるばかりか、利用者の豊かな読書体験につながることをご紹介していきたいと思います。
●古典文学を原作とした名作映画を所蔵することの多岐的な有効性について
①映像資料で活字離れの読者層を引き込む
指摘するまでもなくソーシャルメディアが活況を示すなか活字離れの傾向はとみに深まるばかりで、「本を読む」、「本を借りる」といった本来の目的の利用者は減る一方ですが、映像資料を組み込むことで新規利用者の獲得の可能性が高まります。まずは普段図書館に来館しない往年の映画ファンや熱心な映画ファンなどの新たな来館が期待できます。そればかりではありません。古典文学(原作)を読みたくても敷居が高く感じていた若年層や活字を苦手とする層にアピールすることができ、資料の利用率を高めることにつながります。
時代は、今やネット配信へと移行していますが、毎月課金されるサブスク契約と通信環境が必要になります。一方で、DVD媒体であれば、「無料(無償)」で「誰でも・いつでも・平等」に利用することができます。公益性を求められる図書館としては、文化資産として永続的に保存・貸出ができますので、理にかなった所蔵となります。
またサブスクでは鑑賞できないクラシック映画も少なくありません。NHKや民放でも昔のように盛んに映画を放映されることがなくなっています。とくに民放ではモノクロ映画が放映されることはレアケースとなっています。
②手軽な映像世界から文学に触れるという新しいストリームの創出
若年層や文学初心者にとっては、古典文学に興味があっても敷居が高く映るケースは少なくありません。『風と共に去りぬ』は全五巻2500ページから3000ページに及びます。上下巻だけの『嵐が丘』であっても700ページ近くあります。そんな長編の本の厚さに怖気づいてしまうのも無理もありません。しかし映画であればその長大な文学世界は二時間程度に圧縮され表現されています。何週間も読書に時間を要することなく、容易に短時間でその世界に触れることができるわけです。
また近年の活字媒体における平明な文体しか読んでこなかった読者層は、ドストエフスキーやスタンダールといった古典文学の訳文が難解極まりなく映り敷居の高さを感じてしまうことも少なくないでしょう。しかし映像世界から入れば、複雑な文体や馴染みのない語彙に圧倒されることなく、映像を通じて作品の骨格に触れることができるわけです。
③映像から原作へという新しいストリームの創出
さらに映像で観た作品の原作に触れてみたいと思う利用者も増えてきます。文学と映像は表現方法がまったく異なります。一方は時間の制限もなく内面描写も自由ですが、映像の世界は時間という制限があり、複数の登場人物の内面描写には適していません。表現方法が異なるばかりか、映画の監督と小説の著者というつくり手の違いによって、伝えようとしたテーマが微妙に異なっていることも珍しくありません。またあらすじを知っていたとしても読書体験が損なわれることはなく、逆に映像で観た体験は、文学を読み解くための適度な補助線となり、深い文学世界をより立体的に理解することへとつながります。
●「映画と文学」をテーマとした企画展示で利用者にアピール
新しい利用の流れを創出するには、館内における利用者へのアピールも重要です。特設コーナーでの展示を見て、いままで何となく気になっていた文学作品が映画化されていることを知ったり、逆に読んだことのある本が映画化されていることを知ることで興味が喚起されることが期待できます。企画展示のテーマも王道の「世界文学フェア」だけでなく、「ミステリー特集」や「フランス文学・思想特集」など様々に展開が可能です。
また館内での上映会と連動して特設コーナーを設け、映画作品と関連する書籍を並べて貸出数を高めるという方法もあります。
●結び
映画と小説は20世紀以降、二人三脚のようにお互いに影響を与えながら表現芸術や娯楽芸術の可能性を広げてきました。古典的映画、名作映画を揃えることは、単なる娯楽資料ではなく、読書活動や学習支援と接続する資料として活用できます。長期的な蔵書価値を持つ分野として、図書館資料の一部に組み込んでみることを検討してみてはいかがでしょうか。Bunkidoでは、パブリックドメインの映画に日本語吹き替えや日本語字幕を付与しています。保有作品は2000タイトル以上になり、古典と連関する映画を多数保有していますので、この機会にご購入をご検討ください。お問い合わせはフォームよりお願い致します。




