フレンチ・ヌーベルバーグの傑作『現金に手を出すな』を自主上映してみませんか。

フレンチ・フィルム・ノワールの金字塔、映画『現金に手を出すな』を自主上映してみませんか。Bunkidoでは、当作品の日本語吹替版および日本語字幕版をご用意しておりますので、さまざまな上映形態に対応が可能です。

言わずと知れたジャン・ギャバンの代表作のひとつ。ハリウッドで戦後人気を博したフィルム・ノワールというギャング映画に倣って制作された、最初のフランス版フィルム・ノワール映画です。米国版とは一味も二味も異なり、小粋で人間味あふれるこのギャング映画は、その後のフランス映画にフィルム・ノワールブームという大きな潮流を巻き起こしました。

監督は、市井の人々の人間ドラマを巧みに表現することを得意とするジャック・ベッケル。トリュフォーやゴダールなど、ヌーヴェルヴァーグの作家たちから絶大な信頼を得ていた監督です。ジャック・ベッケルは、米国のギャング映画で伝統的に描かれてきた裏切りや抗争、誘拐、銃撃戦などに加え、老齢に差しかかったギャングの憂愁や昔気質のギャングの友情、新世代の強欲で非情なギャングとの確執、儚く潰えた夢などを織り交ぜ、米国のギャング映画にはない人間ドラマとしての深みと叙情を映画に与えることに成功しました。本作は、ベッケル唯一のギャング映画でもあります。

当時のジャン・ギャバンは、中年から壮年に差しかかろうとしていましたが、名匠マルセル・カルネとの仲違いにより長いスランプに陥り、フランスでは忘れられた存在のようになっていました。しかしこの映画で初老のギャングを演じた演技が高く評価され再び脚光を浴びます。1954年のヴェネツィア国際映画祭では、この映画で男優賞(ヴォルピ杯)を受賞することにもつながりました。その後も多くのフレンチ・フィルム・ノワールに出演し晩年まで活躍しました。

ジャン・ギャバンの敵役には、元プロレスラーでこれが映画初出演となるリノ・ヴァンチェラが出演しています。ギャバンの勧めもあり、その後も俳優業を続け、『冒険者たち』や『バラキ』など多くの名作に出演することとなりました。また、『死刑台のエレベーター』や『突然炎のごとく』で知られるジャンヌ・モローの、大スターになる前のうら若き姿が拝めるのも、この映画の楽しみのひとつです。撮影はスタジオのセットだけでなく、パリ市街やニースなどでのロケ撮影も行われました。

また、日本だけでなく世界中で大ヒットした「グリスビーのブルース」には興味深い逸話があります。監督のベッケルは、ジュークボックスをかけるシーンに使う音楽を、音楽担当のジャン・ウィエネルの意向とは異なる曲にしようとしていたのです。それを知ったウィエネルは、ハーモニカを使ったこの楽曲を一晩で仕上げベッケルを説得したそうです。その一晩の努力が、世界中で大ヒットする楽曲の誕生につながったというわけです。

なお、原題 “Touchez pas au grisbi” は日本語に直訳すると「その金に触るな」となりますが、当時の配給会社はこれをそのまま直訳せず、『現金に手を出すな』と変更、「現金」の部分を「ゲンナマ」と読ませました。この粋な邦題が、日本での大ヒットの後押しにつながりました。

この機会に、『現金に手を出すな』の上映会の企画を立ててみてはいかがでしょうか。上映権の料金については、お問い合わせフォームよりご連絡ください。上映規模に応じて、現実的な利用料をご提示いたします。